花駅への習作
坂道には名も知らぬ草花で満ちている
ほんの少し前には小さな列車がここを
朝夕だけはなんとかほぼ満席の乗客とともに
この坂を上り下りしていた
隣に並ぶぎゅうぎゅう詰めの自動車の横を
がたがた車体のあちこちから音を出し
車軸を軋ませ走っていた
廃線が決まると
線路脇にカメラを構える人が増え
人々は沢山の話しをしたが
電車が走らなくなってすぐ
レールも枕木も架線も
沢山の人が来て取っ払っていった
柵を廻らし人も自転車も単車も車も入れない
ぶつぶつに千切れた路線の遺体痕
看板ははずされ駅の名も憶えていない
そこは名も知らぬ草花で満ちている
それは私がその草花の名を知らないだけ
そして人がどんな記号で草花を呼ぼうとも
花を咲かせ根を延ばす助けにはならない
人は何度も地面に線を引きなおし
人の通る道に変えることになるだろう
もともとこの坂道が私たちのものではないと
忘れてこの道をのぼりおりしている
# ひとまずの習作ということで覚書…
世良満久
〆
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